高齢者ケアを考える シリーズⅡ.介護予防③介護予防活動の目標

高齢者ケアを考える
シリーズⅡ.介護予防③介護予防活動の目標

自分らしい精神的に充実感ある生活を送ることを目標に

③介護予防活動の目標
この目標には3段階程度が考えられます。まず、小目標では要介護状態を未然に防いだり、悪化を予防するために必要な知識・技術を習得することです。これによって、転倒、閉じこもりを防止、気道感染防止、認知症の予防対策となります。
中目標では、自分が価値を置く生活を営むために必要な健康に関する機能の維持・向上です。これによって、身体機能、精神機能、社会的機能の維持・向上が図れます。
そして、大目標では一人ひとりの生活の質(QOL)の向上です。これは自分らしさを保てる生活であったり、精神的に充実感が感じられる生活を送ることです。

私たちは日常の生活を送っていくうえで、「あたりまえ」に行っている様々な事柄があります。食事を摂る、排泄をする、入浴をする、夜眠るなどといったことです。それらは基本的に自分の意思によって、自ら行おうとするものです。
介護では、何らかの障害や疾病などで、このような行為がスムーズにいかない人たちに対して、その人たちの思いに沿い、できるだけ自分の力でできることをしてもらいながら、できない部分への支援をしていくことが重要なポイントになります。
介護職の業務は、本人の主体的な気持ちや意思を、全面的に肩代わりすることではありません。本人の「自分でしよう」「自分の力でやりたい」という気持ちを受け止め、その生活を支援していくことです。つまり、介護は本人が望む主体的な生活を支援していく業務にほかなりません。

高齢者ケアを考える シリーズⅡ.介護予防②介護予防とは

高齢者ケアを考える
シリーズⅡ.介護予防②介護予防とは

老化による衰えをできるだけ遅らせ、自分らしい生活を送る

②介護予防とは
A.要介護の状態になることの予防
「介護予防」とは、ひと言でいえば要介護状態等になるのを予防することです。重要なことは、老化そのものによる身体的・精神的・社会的機能衰えをできるだけ遅らせるということです。
つまり、単に疾病にかからない、生活習慣病を予防するというだけでなく、もっと積極的に自分の生活をデザインし、高齢になっても心身の機能や、社会での活動性をできるだけ維持し、精神的に充足感のある、自分らしい生活を送ることができるようにすることが大切になってくるのです。これが介護予防の考え方です。

B.要介護状態重度化の予防
高齢化の進行により、あるいは疾病により、たとえ一部の生活機能の低下をきたしているとしても、基本的な考え方は変わりません。残存能力の活用を図る工夫をすることにより、要介護状態の重度化防止、すなわち悪化することをできるだけ予防することも「介護予防」といいます。

高齢者ケアを考える シリーズⅡ.介護予防①要介護状態の原因疾患

高齢者ケアを考える
シリーズⅡ.介護予防①要介護状態の原因疾患

1位は脳血管疾患、2位は認知症、3位は衰弱
①要介護状態の原因疾患
始めに、介護が必要になる、つまり要介護状態になる原因をみてみましょう。2010(平成22)年の国民生活基礎調査によると、1位は脳血管疾患、2位は認知症、3位は高齢による衰弱、4位は関節疾患、5位は骨折・転倒、6位は心疾患となっています。
この原因には男女差もあります。男性は脳血管疾患が原因である割合が高いのに対して、女性では脳血管疾患、衰弱、認知症などがほぼ同じ割合です。この結果、要介護状態になるのは、衰弱や転倒・骨折、認知症、関節疾患なども多く含まれていることが分かります。
これらの疾患をきっかけに、家に閉じこもってしまう「閉じこもり」になってしまう高齢者も多くいます。加齢などにより、身体的機能の低下などから事故を起こしやすく、病気にかかりやすくなっています。疾患→閉じ籠り→心身機能の低下、という負の連鎖により、要介護状態が重度化してしまうことがあります。

資料出所;一般財団法人 長寿社会開発センター「人間と社会・介護1」より(以下、同)

高齢者ケアを考える シリーズⅠ.「介護の前に」④自立支援の多様性

高齢者ケアを考える
シリーズⅠ.「介護の前に」④自立支援の多様性

求められる高齢者・家族個々の事情に合わせた自立支援
④自立支援の多様性
自立が基本といっても、高齢者の場合、高齢者が家族に依存しないで一人で生きることを意味するものではありません。高齢者が家族と一緒に暮らすことを望み、家族もそれを望んでいる場合には、家族と同居して暮らすことがお互いにとって望ましい選択になります。
しかし、高齢者が同居を望んでも、家族の事情がそれを許さなかったり、家族がそれを望まなかったりするなど、世の中には様々な事情を抱えた家族が存在します。また、子供の世話にはなりたくないといって、子供との同居を望まない高齢者もいます。
ひと口に高齢者といっても、実際の高齢者は様々な事情を抱え、様々な考え方を持っています。高齢者の自立といっても、その前提となる高齢者像は多様であり、したがって自立のあり方も多様なものとなります。
このことを理解したうえで、できる限り一人ひとりの高齢者が、その生活のあり方を自ら決定できるように支援することが「自立支援」なのです。
心身の機能が低下している場合には、介護による支援が不可欠となりますが、高齢者にとってどのような介護が適切かは、要介護の状態、医療との連携の必要性の程度、家族との同居の有無、家族による介護の可能性やその程度、地域包括支援センターやボランティアなど地域のフォーマル・インフォーマルな支援の有無・程度などによって異なります。
さらに、自立支援は介護に限られません。経済的な問題、住まいや仕事の問題、地域社会との関わり方など、高齢者の生活全般に関係してくるものであり、高齢者の自立支援は、社会全体で取り組まなければならない課題なのです。
これらの様々な支援によって、高齢者が社会の一員としての役割の実感を持つことができれば、トータルな意味での自立支援を実現することになるのです。

高齢者ケアを考える シリーズⅠ.「介護の前に」③自立と共生

高齢者ケアを考える
シリーズⅠ.「介護の前に」③自立と共生

他者と相互に歩み寄り譲り合い、協働する
③自立と共生
自立が、個人として尊重することを基本とするといっても、それは個人が社会から孤立して生きることを意味するのではありません。人間が他者から孤立して一人で生きることは不可能であり、人間は社会の中で、他者とともに生きていく社会的存在なのです。したがって、自立といってもそれは他者との共生の中での自立を意味します。
前回述べたように、自立が自らの考えに従って生き方や生活のあり方を決定し、実践することだとしても、自分一人で勝手に生きることを意味するのではありません。社会の中で他の人々と協働しながら、自分の考え方を主張し、実践することなのです。
その過程では、他人の意見や考えを聞き、理解することが必要になりますし、それが自分の考えや利害と衝突する場合には、お互いが歩み寄り、譲り合うことが必要となります。それは、他者に支配されることではなく、社会の中で他者と共生していくために必要なことなのです。
また、個人が多様な存在である以上、他の人々と協働するとは、心身の状況や年齢、性別などが異なる多様な人々と協働し、共生していくことを意味します。したがって、要介護高齢者のように身体の機能が低下し、自分の力だけでは自立した日常生活が送れない人がいる場合には、社会が必要な援助を行い、日常生活の自立を支援することが必要になります。
これによって、その高齢者は人格的自立を獲得し、自らの望みを実現しながら生きることができるようになるのです。この場合には、日常生活の自立を支援することが人格的自立につながり、高齢者の尊厳を保持することになるのです。

高齢者ケアを考える シリーズⅠ.「介護の前に」②自立(自律)の意味

高齢者ケアを考える
シリーズⅠ.「介護の前に」②自立(自律)の意味

他からの支配を受けない「自立」と「自律」
②自立(自律)の意味
「自立」とは「他からの支配を受けずに存在すること」を意味し、「自律」とは「他からの支配を受けずに自分自身の規範に従って行動すること」を意味します。つまり、「自立」はその人の存在自体に着目するのに対し、「自律」はその心理的・精神的側面に焦点を当てたものということができます。
両者に共通するのは「他からの支配を受けない」ということです。他からの支配を受けることなく、個人がその考えに従って自らの生き方や生活のあり方を決定することが自律であり、それを実践することが自立なのです。
自立には、人格的自立だけでなく、経済的自立、社会生活における自立、日常生活における自立などがあります。そして、「自立」という考え方の基本には、個人を尊重する考え方があります。日ごろ、私たちは何気なく「自立」という言葉を使っていますが、実は想像以上に深い意味を持っているのです。
社会における価値の根源は個人にあると考え、何よりも個人を尊重する考え方を基本として、これを他者との関係に着目して表現したのが「自立」であるといえます。つまり、自立を基本とするということは、個人の尊厳を基本とするということなのです。
しかし、ひと口に個人といっても、健康な人、病気や障害のある人、子供、若者、高齢者、男性、女性など多様です。したがって、個人を尊重するということは、これら多様な人々の存在を尊重するということを意味します。

高齢者ケアを考える シリーズⅠ.「介護の前に」①高齢者の自立支援

高齢者ケアを考える
シリーズⅠ.「介護の前に」①高齢者の自立支援

介護職を目指す方はもちろんのこと、そうでない方々にも、一般社会人として理解しておいてもらいたい常識について、改めて「人間の尊厳と自立」という面から述べたいと思います。

高齢者の自立・尊厳を守るために

①高齢者の自立支援
人間は生物である以上、老いる存在です。したがって、生きることは老いることであり、同時に老いることは生きることなのです。このため、人生の最後をどう過ごすかは、人間にとって最も大切なことなのです。
人間は意思を持った存在であり、その思いや望みを実現するために、様々な行為を積み重ねて人生を送ります。生きることは自分の望みを実現していくことでもあります。したがって、年老いてからも自分の意思で生活を決定し、自分が望むような生活を送ることは、だれにとっても重要なことです。
しかし高齢になると、足腰が弱って自由に活動できなくなったり、自分一人では十分な判断ができなくなったりするため、自分の望むような生活を送ることが困難になります。その結果、高齢者の自立が損なわれ、ひいては人間としての尊厳が脅かされることにもなりかねません。
このように高齢期になると、心身の機能が低下するため、高齢者が自立した生活を送るためには、個人の努力だけでは限界があり、高齢者が望むような生活を送れるようにするための社会的な支援が必要となります。この自立支援のための社会制度として、介護保険制度や成年後見制度などがあるのです。

資料出所;一般社団法人 長寿社会開発センター「人間と社会・介護」より(以下、シリーズ使用分は同資料)