施設長に聞く③しらかばホール 理事・施設長 山本雅司氏


 はじめに

 世界でも類を見ない速さで進行する高齢社会日本。これとともに避けて通れないのが要介護者の急増。それだけに今後、様々な施策が講じられることを前提にしても、2025年ごろまでは少なくとも諸施策が追い付かず、慢性的な人手不足が解消されることはないとも指摘されています。
とはいえ、要介護者にとっては日々生活するうえで、介護の手なしには成り立ちません。そして、ちょっとした手抜かりが大怪我につながりかねない、介護の現場では気が抜けない日々が続きます。
そこで今回から、介護施設の施設長に施設運営にあたっての“こだわり”や、入所者に対する配慮、スタッフに求める姿勢、そして入所者の施設における暮らしぶりなどを取材、「介護最前線」の生の声をお届けします。

介護現場から・シリーズ「施設長に聞く」③

社会福祉法人 みすず福祉会/特別養護老人ホーム しらかばホール
理事・施設長 山本雅司

地域福祉力形成の中心となる施設
将来は障害者事業も
 ―施設運営にあたり中心に据えておられる考え方からお聞きします。
山本暖かい家庭内の人間関係を基本とした地域福祉力形成の中心となり、高齢者の在宅介護を可能とするために機能する施設を運営理念として掲げています。そして私自身、多くの人の命を担っている立場だと認識し、意識して業務に就いています。

 ―利用者・入居者に対する配慮という面で特に意識しておられることはありますか。
山本利用者の生命の尊厳を守り、安全・安心な生活を確保することです。そのために個々のニーズに焦点を当てた支援に配慮しながら、総合的で効果的な質の高いサービス供給に努めています。
また、入居者に対しては常に誠意をもって丁寧な接し方に徹し、一人ひとりを大切にする心を意識しています。
私の好きな、江戸時代の儒学者、佐藤一斎の遺した言葉に「以春風接人 以秋霜自粛」(言志後録33条)というのがあります。「春風のような温かさをもって人に接し、秋の霜のような厳しい心で自らを律していく」。つまり、自分自身に対して厳しさがあってこそはじめて、人にやわらかく接することができる-という意味です。この言葉を肝に銘じています。

 ―スタッフに求めておられることは?
山本ショートステイ、デイサービス、特養、グループホームいずれの利用者および入居者の方々を前に、ものに対し接するのではなく、心から一人の人間として接する気持ちを常に持ってもらいたいということです。それはご家族や関係者に対しても同様です。
例えば要介護の重度の方で、ほとんど話せないから、声掛けもしないというのではなく、同じように一人ひとりに声掛けするということです。そういう姿勢が大切です。

 ―スタッフの定着率向上のために講じておられる方策は?
山本施設内研修の充実を図るとともに、外部研修に参加することでスキルアップを進めており、徐々にスタッフに意識改革がみられます。ただ、まだまだ十分ではありません。
こうした状況を踏まえ、スタッフへの配慮は待遇面にも反映させています。夜勤手当を7000円以上、処遇改善手当を3万円弱とし、さらに待遇アップを考えています。こうした例はこの業界ではあまりないと思います。
スタッフはじめ、こうした施設挙げての施策と努力が実を結び、財務状況および稼働率は大幅に改善、この2年間ほどで、定期監査に来られた近畿厚生政局、枚方市の方から、「施設内がずいぶん変わった。明るくなった」といわれました。嬉しいことです。

 ―冒頭で「地域福祉力形成の中心となり…」を理念に掲げているとお聞きしましたが、地域との交流という観点で進めておられることは?
山本継続的にボランティアや介護等体験学生を受け入れ、地域に施設の情報等を発信することで開かれた施設を目指し、地域住民との交流の促進を図っています。
例えば夏祭りには、この地域、出屋敷や東田口の自治会長、当施設理事の陶芸家中西氏、周辺住民の応援を得て施設内にやぐらを建て盆踊りを行いました。また、地元保育園園児との世代間交流も行いました。その甲斐もあって、多くの地域の方との交流ができ、個人的な関係もできました。

 ―施設の今後の方向として何かお考えのことがあれば、お願いします。
山本弱者救済の視点から、障害者に夢やロマンを与える障害者事業をぜひ手掛けたいと考えています。高齢者と障害者の2つの柱を基本にし、障害者の自立に向けた就労支援事業です。
このために、ハーブはじめ付加価値の高い野菜や、無農薬の野菜栽培に取り組む方向で準備を進めつつあります。レストランなど販売先に意見も聞き、手応えを得ています。うまくいけば6次産業化の構想も持っています。このほか陶芸家、中西州氏のサポートも得られますから、陶芸も候補に加わります。
障害者は全国で750万人に上っています。現在、就労継続支援B型事業所「しらかばの郷」を運営していますが、いま申し上げた事業をぜひ軌道に乗せ、将来的には、救済が遅れている障害者グループホームの建設も行いたいと思っています。

社会福祉法人 みすず福祉会
所在地 〒573-0003 大阪府枚方市出屋敷西町2丁目1-1
ホームページ: http://www.misuzufukushikai.jp/
電 話 TEL072-849-1146 FAX072-849-1268
理事長 馬場清志氏
運営施設
・特別養護老人ホーム しらかばホール(大阪府枚方市)
・グループホーム しらかば(大阪府枚方市)
・デイサービス 小鳥のさえずり しらかば苑(京都市山科区)
・デイサービスセンター しらかば(大阪府枚方市)
・居宅介護支援センター しらかば(大阪府枚方市)
・グループホーム すまいる(兵庫県赤穂市)
・医療法人社団 てんわかかりつけ医院(兵庫県赤穂市)
・しらかばホール診療所(大阪府枚方市)
・しらかばの郷(就労継続支援B型、大阪府枚方市)